迷走女に激辛プロポーズ

『そう言えば白鳥佑都も海外事業部ですね。彼は異例中の異例で配属されたそうです』

佑都は研修期間中も注目の的だった。

『海外事業部は最低三年、他部署で経験を積まねば配属されない部署です』

“新入社員の手引き”なるもののそのページを指差し遥香が説明する……が、彼女、これを持ち歩いているのか、とその方が驚きだった。

『但し、事務アシスタントは勤務年数問わずですが、母国語以外、三か国語以上できる帰国子女に限る、です。楓様は母国語以外、五か国語できるので妥当な人選だと人事部に拍手を送りたいと思います』

何気に上から目線だな、と思いつつ、嗚呼、だから屍状態にもかかわらずこの部署に配属されたのか、と遥香の言葉を感慨深く思った。

だが、その直ぐ後で、ちょっと待て! なぜお主が私の個人情報を熟知しているのだ、と心の声が疑問を訴えた。遥香の謎は増えるばかりだった。

『その部署にいきなり配属です。白鳥佑都、何者でしょう』

否、遙香、お主こそ何者だ?

『あの人何か秘めています。似非笑み浮かべて気持ち悪いです』

興味津々ではあるが、婿候補としては対象外らしい。絶大な人気を誇る佑都を気持ち悪い呼ばわりする遥香。しかし、彼女の言葉には頷けた。対面する女性に浮かべる彼の笑みは、仮面のように作られたものだったからだ。

「白鳥佑都情報、掴んだら教えて下さい!」

力強く協力を求められたが、そんな機会は永遠に来ないだろうと思っていた。
だが、予想に反して、その機会は意外にも早くやって来た。