迷走女に激辛プロポーズ

まず、瑞々しいサラダを頂き、次にきんぴらごぼうパンを頬張る。

ここのパン生地は具によって微妙に味が違う。相性を見極め、ベストパートナーを選んでいるかのようだ。だから、出来上がったパンはどれも最高に美味しい。

モグモグと味わっていると、テーブルの端に置いたスマホが、ブーブー震える。
しつこい! 気分良く食べているのに、と指でそれを弾きフンと無視する。

そして、徐に店頭に目を向ける。霧ヶ峰オーナーは奥に引っ込んだのだろう。レジ前には、霧ヶ峰氏の母親と小動物のような可愛い彼の奥さんが、列をなす客の対応に追われている。

奥さん……夫婦……かぁ……。

イートインコーナーにいると、霧ヶ峰夫妻の噂をよく耳にする。
年の差が十もあるとか、旦那さんが奥さんを溺愛しているとか……。

そりゃあ、あれだけ可愛いのだから、当然だろう。

でも、よくあの奥さんを捕まえたなぁ、と感心しながらも、もしかしたら、奥さんの方が、ベタ惚れだったのかもしれないな、と想像して、嗚呼、それは無いか、とすぐに打ち消す。

まぁ、そうだな。ここのパン生地と具ではないが、最終的に二人の相性が良かったから夫婦になったのだろう。

相性かぁ……昨日の佑都とスレンダー美人……お似合いだった。
大人の男と女……だった。

微笑み合う二人の姿を思い出し、針千本の呪いを受ける。
胸が……痛い。