迷走女に激辛プロポーズ

『海外事業部はエリート集団の巣窟です。将来有望なイケメンがゴロゴロ転がってます。全女子社員の憧れの部署です』

そして、彼女はどこで仕入れてくるのか、社内の情報に精通していた。

入社間もないのに、どうしてそんなことを知っているのかと聞くと『そんなの皆知ってますよ』と当たり前の顔で、当たり前のように言われた。だから、そうか当たり前なのか、と首を捻りながらも納得した。

だが、そのすぐ後で、なぜか彼女はクスンと鼻を鳴らし切実に訴えた。

『なのに私は総務です。婦女子ばかりです。そんな所でどうやって婿を捕まえればいいのでしょう?』

いやいや私に言われても、と思ったが、どうやらこの娘は婿を見つけに入社したらしい、とクスンの理由は理解した。

遥香は小柄で色白。少しポッチャリではあるが、アザラシのゴマちゃんみたいで可愛い。だから悲観は無用だ、と慰めの言葉を掛けようかと思ったが、アザラシの赤ちゃんと言われ、喜ぶかどうか疑問なので黙っておいた。

こんな風だから、当時の私は遥香のことを、結婚までの腰掛けOLと思っていた。だが、何の何の、彼女はとても優秀だった。

痒いところに手が届く的な仕事ぶりと、膨大に蓄積された脳内情報量とで、社員たちは勿論、重役連からも可愛がられ重宝がられている。

――だが気の毒なことに……未だ婿は見つかっていない。