迷走女に激辛プロポーズ

辞令は人事から各々に通知されるが、ご丁寧に各階の掲示板と社員食堂にも張り出される。

私が入社した年は五年に一度の大移動の年だったので、A1サイズの用紙に部署と名前がビッシリ書かれていた。それを黒山の人が見入っていた。

同期の神崎遥香もその中の一人だった。
彼女は私に気付くと、何故か雄叫びを上げ、駆け寄ってきた。

同期とはいえ、ほぼ初対面に近かったのに彼女の第一声は……『楓様! あの部署に就けるとは、流石です! カッコイイです!』だった。

大きな瞳をキラキラ輝かせ、興奮気味に言葉を発する彼女に、私は何故に“様“呼びと思った。

『キリリとした切れ長の大きな瞳、艶やかで真っ直ぐな黒髪。凛と気品有る立ち居振る舞い。触れれば切れそうな物言い、ザ・女流剣士って感じで、あの部署にお似合いです』

何故に女流剣士? そもそも女流剣士が海外事業部に相応しいのか? 神崎遥香、コヤツもT大卒の宇宙人なのか、とT大は宇宙の入り口と信じて止まない私は本気でそう思った。

未だ謎めいた言葉を発する遥香だが、判明したことが一つ有る。
彼女は超お嬢様女子大卒で、そっち系の宇宙人ではなく、あっち系の宇宙人だった。