「高校生? エレベーターって……初めてセカンドに行った日?」
「そう、あの時お前に打ち明けた『最愛の人』それはお前のこと」

なんですとぉ!

「お前は架空の女を想像していたようだが、お生憎様、幸か不幸か俺がズット想っていたのは、お前ただ一人」

T大卒の宇宙人は、発する言葉でブラックホールが作り出せるようだ。
私は完全に思考を飲み込まれてしまった。ついでに涙も飲み込まれた。

鳩が豆鉄砲を食らったような目をし、口を埴輪のように開け、一時停止する。

佑都の溜息とヤレヤレ、という声が聞こえ、彼が何処かに行く。
そして数分後、戻ってくるとホットタオルで私の顔を丁寧に拭き始めた。

温かくて気持ちがいい。少し感覚が戻る。

「楓、好きだよ。愛している。真実が分かった以上、もう遠慮しない。心置きなくお前を口説く。覚悟しろ」

拭き終った私を抱き締めると、唇に口づける。

「――好き……愛している……私を……」

現実味の無い言葉を口に出すと、ジワリ胸に何かが込み上げる。

「――私は私の気持ちが、まだ分からない……」
「――じゃあ、もし、婚約者みたいに、俺がいなくなったら? 俺がいないとどう思う?」

佑都はそう言うと、私を腕に抱いたままベッドに横になる。そして、ゆっくりキスを深める。初めての大人なキス。

ブラックホールに飲み込まれた思考が、数周して戻ってきた。
清香たちとの会話が蘇る。
――触れたい……キスしたい……それ以上……したい……。