迷走女に激辛プロポーズ

「海外事業部ITシステム戦略課の矢崎恭吾課長です」

遥香は「やだもう、恥ずかしい」と乙女の定番とも言える台詞を言いながら、両手で顔を隠す。

「ハァ? 矢崎課長!」と清香。
「ウソッ、恭吾お兄様!」と百合子。

二人が同時に言葉を発した後、三秒遅れて私が驚きの声を発する。

「お兄様? 兄!」

遥香、清香、百合子は、驚くのはそこ、という顔と、あら、知らなかったの、という顔をする。

百合子はさておき、当然のように知っている二人の方が、私には意外だ。
しかし、そうか、百合子のフルネームは矢崎百合子かぁ、とちょっとスッキリした感が、気分を満足させる。

そこへ清香の声と百合子の声。

「あの、矢崎課長よ!」
「あの、お兄様ですよ!」

また二人の声がハモる。

「有り得ない!」
「絶対有り得ないです」

遥香がウンウン、とにこやかに頷く。

「そうでしょう。そうですとも! 私も自分が信じられません。あのボサボサヨレヨレ人間失格みたいな矢崎課長を私が好きですって! 有り得ないですよね。本当に信じられません」

娘よ、何気に罵倒していないか? かなりケチョンケチョンだぞ。

「でも、好きになっちゃいました、矢崎課長を」