のんびりとした海辺の景色から車の行き交う街中に入った時、それまで黙っていた佑都が口を開く。

「なぁ、楓、お前、俺のこと男として好きになれないか?」

ハァ? コヤツいきなり何を言い出すのだ、と思いながらもドクンと心臓が音を立てる。

ソッと横目で運転席を見る。真っ直ぐ前を見る佑都の横顔。その顔に少し傾きかけた日差しが後光のように当たる。私は眩しさに目を細めながら呟くように返事をする。

「――分からない」

彼が何を考え、そこにどういう意味があるのか分からない、でも、返す答えは同じだ。

「フーン、じゃあ、嫌いになれば? 嫌いだと言えよ」

本当に何が言いたいのだろう。駄々っ子のようだが、その言葉が針のように胸に突き刺さる。まるで針千本の呪いのように……。

「何で突然そんなこと言うのよ!」

もうイヤだ! 怒りたいのか、泣きたいのか、訳の分からない感情が入り乱れる。

「修一先輩が気持ちに区切りを付けろと言っただろ。俺はお前が嫌いだと言ったら、今後、仕事以外でお前に一切関わらない……そう決めた」

彼がそう決めたのなら、本当にそうするだろう。