迷走女に激辛プロポーズ

佑都の機嫌がすこぶる良くなった。
あのボイスレコーダーのお陰らしい……が、私は穴があったら、どこでもいいから入りたい。

「それにしても子猫ちゃんって、いい女だわ。流石、私が惚れただけあるわ」

清香の目がメドゥーサではなくハートになっている気がする。
でも、これはこれで怖い。

「男前ですよね。流石、ザ・女流剣士です。そう言えば、百合子も『楓お姉様』とか言っちゃって、連絡先を聞いてきたんですが、教えませんでした。あの子、面倒臭いから」

女流剣士はさて置き、ウンウンと頷き、賢明な判断をありがとうと心の中で礼を言う。

「で、どうなったんですか? 百合子、頑張るって言っていましたが」

遥香は佑都に訊ねる。

「どうもこうも、会ってもいない。実家に何か言ってきたらしいが断ってもらった。今日、結婚宣言すると言ってな」

そうか、会わなかったんだ。
胸に刺さった、小さな針が一つ消える。

ん? で、今、実家が……結婚宣言が……とか言わなかった?

「そうだったのですか。よかったです」
「あぁ、心配掛けてすまなかった。そこでだ、日取りは当初言っていた通り十月十日で確定した。予定通り発信してくれて構わない」
「了解です。一番スムーズに伝わる主要人物ごとのグループを作りました。一部、今か今かとお待ちの皆様もいらっしゃるので、早速!」

遥香はスマホを取り出し、凄い速さで何かを打ち終える。

すると、テーブルの上に置いた私のスマホが震え出し、時同じくして社食内のあちらこちらからもスマホ音が鳴り出す。