迷走女に激辛プロポーズ

しかし、ニンニクの香り高らかに、魅惑気に『私を食べて』と誘う料理に罪は無い。

「せっかくだし、温かいうちに頂こう」

渋面の佑都が何か言い出さないうちに、とフォークをチキンに突き刺し口に入れる。
おお! 超絶美味!

ほんのり付いた下味の、深い味わいに、流石だねぇ、プロの仕事だねぇ、と感嘆の息を漏らす。

ホフホフ食べていると佑都がクスリと笑う。

「お前の容姿はかなり気に入っている。美味そうに食う姿も実にあっぱれで気持ちがいい」

ん? また何か言い始めたぞ。

「お前のケチなまでの経済観念には尊敬の念すら覚える」

コヤツ褒めているのか? 貶しているのか?

「乱暴な男言葉も態度も、外国生活が長いのと兄貴の影響だから、致し方ない」

喧嘩を吹っかけているのか?

「お前の過去は知っている。それでもいい、と言っているのだ。何の文句がある」

ハァーッ、文句ありありだろう!
天才と馬鹿は紙一重というが、コヤツ、究極の紙一重だ!

同期で飯友という間柄で、ミジンコ程の恋愛感情も持たない男のプロポーズ。ふざけているのか、と思うのが当然だろう。普通ならここで一発ビンタだ! 食らわせないだけ有り難く思え、と心の中で大いに罵る。

本当、思考がアンドロメダまで飛んでいるT大卒は、凡人には理解できん!

ゴクンとチキンを飲み込み、お冷で口を潤す。
だったら関わらないに越したことはない。