若頭に愛されて




「あ、琉生さん。こちら見回りの班ですが。はい、はい、ええ。さっき少女が我々に助けを求めてきて今一応かくまっているのですが、はい、それがさっき急に意識を失ってしまって、はい。わかりました、では丁寧にお送りさせていただきます、はい、失礼します」


「どうだったか?」



弘明がチラッと後方を振り返り聞いてくる。



「丁寧に本部に連れてこい、だとよ」


「そうか…。で、怜央さんは?」


「夕方に急遽会合が入ったらしい」


俺らのトップの怜央さんがいないときに俺らをまとめてくれるのは副トップの琉生さんだ。



「まあ、そういうことだから丁寧に本部まで連れて帰るぞ」

「らじゃ」



弘明が車を発進させた。


ふと、隣の座席で意識を失っている少女の顔を見る。


改めてみても、とても可愛い顔をしている。肌も白く、睫毛もながい。


きれいな白い肌なのに、うでの破れた服の間からは青いアザが見え隠れする。


「一体こいつは……なにもんなんだろうな…」



「おい、信司(しんじ)襲うなよ…?」


「はあっっ!?」


少女の顔を食い入るように見ていたからか、顔をあげるとミラー越しに樹と目が合い、樹の顔はニヤニヤしている。



「そんなことしたら俺明日生きてねーしっ」


「ふはっ」 
「ぷっ」



弘明と樹が同時に吹き出す。



「おいっ!お前らな、笑い事じゃねーぞ」



「わーかってるって」



いや、絶対わかってねーだろ。


琉生さんに、丁寧に本部に連れてこいって言われたのに、それを破って襲うバカがどこにいるんだ。



怜央さんや琉生さんの言うこと破ったら俺次の日絶対いねーわ……、とか考えながらシートに身を預ける。


窓越しに空を見上げると、妙にきれいな満月が見えた……。