そして、怜央の少し低い声が心地よく響く。
「このまま、、、俺にキスされたくなかったら、今すぐ俺を振り払ってでも逃げろ」
「え……?」
「このまま、キスされてもいいなら、目閉じろ」
私は、躊躇いながらも目を閉じた。
今思えば。
私は、家に帰れば悪夢のような日々から逃げたかったのかもしれない。
あの男が隣にいるという現実から…。
普通の人がこんな話を聞いたらおかしいと思うだろうか。
今日はじめてあった人と。
助けてもらったとはいえ、キスしようとしてるなんて。
自分でも内心驚いている。
怜央くんに、、、キスされるのなら、嫌じゃない……。
「偉い子だ……」
頭を少し引き寄せられ、怜央の唇が触れる。
短いとも長いとも言えないキスだった。
目を閉じた私を、怜央は軽い女と思っただろうか。
