それはあたたかな、春でした。


私はその年、高校一年生で入学式に出るために駅を経由して自転車を全力でこいでいました。
私の入った高校は自宅からは少し遠く、駅で二駅、自転車で15分という道のりでした。その学校は駅から遠いということもあり、学力はほどほどのところといってもあまり志望する人は多くない学校でした。

なぜ私はその学校に入ろうかと思ったかというと、成績のこともありますが単純に登下校の時に通る桜がきれいな河川敷が好きだったからです。
入学説明会の時、親の都合により徒歩で向かわされた私はイライラしながらも歩いていましたが、その花道を通ると、ぱっと気持ちが明るくなったのです。
どうやらここらへん一体の桜は特別な力があるようで、けがをした子猫をここに連れて行ったら治りが早くなった、といううわさがあるほどでした。
そんな桜に励まされてる気がして、ラストスパートかというくらいに早めに歩けたのです。

やはり、この桜にはきっとなにかあるんだろうなという思いを胸に抱き入学式へと向かう私はこのとき気付きませんでした。













桜の木の隣にたたずむ青年に