「お前のその憎たらしい笑顔で言われても
なんとも思え…ません。」



二人きりの時でない限り敬語にしよう。

ああは言ったが、ヴィル爺に
何か言われてもたまったもんじゃない。



「まあそれはいいとして、
今からお嬢様のスケジュールを伝えます。

まず、朝食を済ませましたら
ヴェアズリー夫人とキティ様をお見送りください。


それと、思ったよりもお嬢様が帰還した
という噂が早く広がりましたので、

ご親族や会社の取引先の方が
急ぎでこちらへ向かっているとの事です。


お嬢様が
挨拶をされた後、記者会見を行い、
歌や楽器、ダンスなどのレッスンです。

何か追加されることはございますか?」



「特にないですね。

むしろ、
レッスン辺りを取り消したいくらいです。」



歌とか、もう、死んだ方がましだ。


音痴な私に何を求むんだ…。


そんなのをやるくらいなら乗馬とか
シングルスティックとかを

教えてもらった方が
実用的だろ。



「良き女性になるには、それ相応の
レッスンを受けなくてはなりませんよ?

少なくとも、態度や性格を調教するよりも
需要があるかと。」




絶対“調教”のことを根に持ってやがる。



「ハァ。わかったわかった……。

では、こちらからも
早めに命令するとしましょう。

まず、

現在のフォスター社の情報と
風向きを悪くした首謀者の特定、

元当主とその妻の遺品の廃棄、

最後に、家の模様替え。」



これくらい言えば多少は困るだろうと
思ったが、

結局セーラとアルトにダメージが
いっただけだった。



「…………仕事、増えた。」



「増えましたね。」



「かしこまりました。」



セーラとアルトにはかわいそうだか、
まあいいだろう。

どうせ従わなくてはいけないのだし。



「では、そろそろ朝食の準備も
出来たことですし、ダイニングへ
移っていただいてもよろしいですか?」