というセーラだったが、
鏡を持ってきたのはアルトだった。


言われるがままに鏡を見ると、
本当に厚い。


顔が白すぎて気持ち悪いな。

そもそも私は普段から屋敷で本を読む
方で、日に焼ける要素がない。



だから塗らなくていいはずだ!

白く塗る原料が鉛じゃないだけマシだが。


この時代、肌が白い女性が一番人気で、
わざわざ血を抜いて貧血状態になったり、
鉛の白粉を使うものもよくいた。


美への関心が全くない訳ではないにしても
この方法は正直引く。



「どうですか?
お綺麗になられたでしょ?」



「………髪も、綺麗に、結いました。」


「あ?ああ、
色々目を瞑れば悪くないですね。」



"色々"目を瞑ればな。


そもそもだが、どうしてわざわざ
記者会見に出るというだけでお洒落を
しなくてはいけないのか…。

髪を結うのは納得できる。


わざわざ肩まで長く髪を垂らして自分が節だらな人間だと公言しなくてもいいだろうから。

(当時は極めてふしだらな事だと考えられていた)


しかし、なんのために厚化粧と派手なドレスを着るんだ?



「よーし、あとはMr.アヴェリーに
伝えるだけですね!」



そういえば、執事は使用人の中でも位が
高かったな。


敬意を払ってのミスターか。

どうでもいいが、ヴィル爺は
"ヴィル爺"なんだな。



一応執事よりも階級上にしてあるぞ。

少なくともランドシュチュワード(家令)
ならば身体を痛める仕事はないだろうと
いう私の計らいで。



ちなみに、セーラは上級使用人の
レディース・メイド。

メイザース兄弟は下級使用人の
フットマン。

エルはアンダーバトラー兼コック。


屋敷の大きさを考えると、この使用人の
人数は少ない。

しかしまあ、私も増やすつもりはないの
だし、これでいいだろう。



「失礼します。」



そうこう考えて、いや、思い出している
うちにシリウスが来た。



「想像以上に御綺麗ですよ。お嬢様。」



そう言われたが、シリウスの笑みが
純粋に誉めているようには見えなかった。


なんというか、私が嫌がっているのを
承知しているような卑しい笑みだ。