「御意。

召喚する際、お嬢様がご自身の魔方陣を
なぞれば、魔方陣が赤、紫、黒の順で
光りだします。

光り出したら、呪文を唱えてください。」



私が浴槽に浸かっているとき傷が赤く
なったのは召喚仕掛かっていたからか。



「『我が契約者、
シリウス・アヴェリーよ。
我が肉と血を伝い、我の元へ。』

と言えば、十数秒でそちらへ行けます。


ちなみに、魔方陣は
お嬢様をお守りするためにあるので、

天使、死神、堕天使、私以外の悪魔は、
手を出せません。よほど強くない限り。」



天使、か。

天使が人間を襲うなど
聞いたこともないが、悪魔と契約している
人間なら、邪魔者かもしれないな。



「それと……。」



「おい、離せ!!
……っ!?」



シリウスが私の胸元を引っ張った。


始めは抵抗したのだが、シリウスの
目を見ると、どうやら
おふざけではないのが分かった。


大事な話のようだ。


白眼はいつも通りだが、
赤茶色なはずの瞳が血のように赤い。



「貴方が私を召喚する回数が増えるほど、
貴方の心は闇に染まる。

一種の呪い、といったところでしょうか。

私と貴方の絆はより一層深まりますが、
人間からかけ離れる。」



真っ直ぐと見つめられたが、
私は目を反らさなかった。


それどころか、見つめ返してやった。



「フッ、この意味がわかっておいででは
無いようですね。

人間からかけ離れると言うことは、貴方の

感情が、怒り、憎しみ、冷酷さ以外、

消えてしまうということですよ?」


「それくらいわかる。だからなんだ?
そもそも私の感情はそれしか今ないだろ?」



「ほう?

犬に甘えられ、それを許した貴方が、
怒り、憎しみ、冷酷さしか感情がないと?

本当に人間でなくなってしまえば、
犬に甘えられようと、周りの人間に
気遣われようと関係なくなります。


犬は自分に利益を持たせないので、
殺すでしょうね。」