「………」



こう言うときには空気を読むのか。


シリウスはなにも言わなかった。



辺りを見回すと、
近くに一輪の花がとさいている。


皮肉にも私の墓の前だ。



花をちぎって、父と母の墓に添える。


私はそのあと、表情ひとつ変えずに、
シリウスに、いや、

自分自身に言い聞かせた。



「行くぞ。」



私の中で、何かが吹っ切れた。


それに気づいたかのように、シリウスは
にやりとほくそ笑み、

自分の胸に手を添えて小さく会釈し、
こう答えた。



「御意。」




雨がさっきよりも大降りになった。


まるで、『何をしても変わらない。』
とでもいうかのように。


『本当は悲しいくせに。
泣け。怒れ。抗え。

お前のその心を、知っている。』


そんな風に言われた気がした。


いや、言っているのは私の心か。



ならば私はこう答える。


悲しいのなら、復讐で埋める。



泣くことで時間など無駄にしない。


怒るよりも、じりじりと復讐心をためて
こんなめに合わせたやつを蹴散らす。


何を抗うのだろうか?
これだけは、反論などしない。

あぁ、いいだろう。抗おう。
シリウスはそのためにいるのだから。