~悪魔執事とお嬢様~



「なぜ、私に契約を
発動させたかったのですか?」



一々苛ついて言い返す余裕はない。

私は今、
状況を把握することで手一杯なのだ。



「お嬢様が契約を発動させる事により、
どれだけ心が闇に染まるかを
知るためです。

それに、魔方陣とはそもそも我々悪魔を
召喚する時、召喚者が身を守るもの。

それによって呪い等の危険が魔方陣を
避けます。

傷も僅かながら回復するでしょう。」



つまり私は実験されていたのだな。

私が召喚の事を忘れていたら、
助かったとしても後遺症が残ったはずだ。


何も、あのときにそんなことさせなくて
いいだろう?



「無能としか言いようがありませんね。
ですが一応聞いておきましょう。

私の心はどのくらい闇に染まったのか。」



シリウスは、
召喚に中毒性があるといっていた。

今のところ召喚をもう一度したいなどと
言う馬鹿げた欲求はないが、

私が数回しか召喚のできない体なら使う
ときによく考えておかないといけない。



「率直に申し上げますと、お嬢様は既に
お心がとてつもなく卑しいので、
あまり影響はありません。」



私が何も言わないからか、調子に
乗りすぎている。

まだ体調が優れていないと言うのに
ふざけるな。



「ハァ、つまり、私の心はまだ闇に
染まっていないのですね。

では、後何回ぐらい可能ですか?」



「お嬢様は私にとって、特殊な存在です。
私もこんなに相性の良い人間と
巡り会えたのは初めてですよ。

恐らく、いえ、
確実に100回以上はできます。

運命の赤い糸で結ばれているのでしょう。」



少し安心した。

100回以上召喚するような場面は
思い浮かばないが、私が闇に染まって
契約が無効になることはないようだ。



「運命ではないですが契約によって
赤い血の糸では確かに結ばれていますね。

さあ、この話は終わるとして、
少年……アブナーはどこへ?」


あの衝撃的な場面を見て、
(思い出した今でもまた吐きそうだ。)
平静にいられるわけがない。

ましてやその死体が知り合いだなんて。



「まだ気絶しております。

身体に別状はありませんが、精神的な
ダメージは分かりませんね。

それと、あの場所にあった死体は、
すべて燃えていました。」



「そうですか。」



どうせ、ヤードにはただの
事故死とされるんだろう。

貧民街では殺人も事故も碌な調べ方が
されないはずだ。


そして、私はこの場にはいないとされる。

だって、どこの誰が
貧民街に伯爵がいると考える?