~悪魔執事とお嬢様~



それなのに、それなのに私の目には
細かく鮮明に焼き付いてしまった。

哀れな恐ろしいこの遺体が。


少女から目を背けたが、ダメだ…
まだ吐き気がする。


吐きそうになると、目を閉じられない。

私はどこか別の場所を見ようとした。
(本当はその場から立ち去るのが
一番良いのだが、生憎身体は動かない)


だが、私が見たその先は、
目を疑うものだった。


老人、老婆、少年、少女。

少なくとも6人は横たわっている。


人間一人の悪臭ではなかったようだ。



「エホッ、エホッ、ゲホッ!
うっ。」



吐き気と咳、最悪のコンビだ。
嗚咽を繰返し、地面に手をついた。

吐き出された嘔吐物にだらしなく涎が
垂れた。

嗚咽を繰り返したせいで、
目元はじわじわと熱くなってくる。


悲しいわけではないが、
苦しすぎて涙が流れそうだ。


ーーおぇっ…ゲホッ、
エホッエホッ、ハア、ハア、ハア


シリウス、何をそんなに手間取っている。

少年などとうの昔に外へ出せただろう?


来い…来い……早く!





そうだ、契約の魔方陣!

確か、胸の魔方陣をなぞれば…。


私は震える手で上着のボタンを外し、
半ば強引に胸元をあけた。

魔方陣の円の部分をぎこちなくなぞろうと
したが、手がいうことをきかない。

一酸化中毒になりかけているのか、
吐き気のせいなのか、
それを考えられるほど頭が回らない。


魔方陣をなぞり終えると、
私の胸元の傷が赤黒く光始めた。

次に紫、黒へと。

シリウスに言われた言葉が合っているか
わからないが、一か八か、唱えてみる。



「我が、ゲホッ、契約者、ハァ、ハァ、
シリウス・アヴェリーよ。
我が、肉と血を、伝い、ゲホッ、
我の、元、へ。

おぇっ!」



もう、限界、だ……………