しばらくすると、馬車は路上で停まった。

場所はそこそこ治安のいい商店街で、
貴族や金持ちなどがよく行く所だった。


私は馬車を降りると、
まずはじめにドレスを買いにいった。

うちには碌なドレスがない。



お母様の趣味がキティと同じようなもの
だったせいか、

私の服も殆ど薄い色をした
フリフリのものばかりなのだ。


そろそろ新調しなくてはと思っていたし、
丁度いい。



「いらっしゃいませ。」



ここはいつも私や母の服を買っていた
店だ。

値段はそこそこ高く、色々なドレスや
紳士服が売っている。

寝巻きもほしい今の私には丁度いい。


本当は私が買わなくてもいいのだが、
変なドレスを選ばれたら困る。


ヴィル爺はもっぱら“お嬢様らしい”
ドレスを買ってくるし、

メイザース兄弟は元々貧乏な出で立ち
だったため、ドレスを選ばせるのは些か
心配だ。


セーラは……趣味があまりにも
子供っぽくて、お母様やキティとおなじ
ようなものを買ってきてしまう。


セーラに頼んだときは本当に失敗した。



(ついでに、シリウスに頼んだらわざと
私が嫌いなドレスを買ってきそうなので
頼むのをやめた。)



「これと、これとこれ。
後は……寝巻きを二着。」



私が指を差したドレスをシリウスが取る。


金銭的な問題を考え、あまり何着も
買わなかった。

もっと余裕ができてからまた
買うつもりだ。



「……お嬢様、あちらの
ドレスなどいかがですか?」



シリウスは片手で、
奥のドレスに手を向けた。


そのドレスは…………




ふざけるなと言いたいほどロリィタな

服だった。



「なんで今まで選んだドレスと違う、
いえ、反対な系統のドレスを私に
勧めるのですか!?」



「私が勧めているのは、お嬢様のお気に召す
ドレスではなく、お嬢様に似合う
ドレスですから。」



どっちにしろ似合わないんだから勧めても
意味ないだろ。

似合っても着ないし。



「では、お金に余裕ができたらそのドレスを
キティに買います。

もちろん、シリウスがキティのために
選んだと言うこともしっかり。」



「流石、人間の卑しさその物を綺麗に
写し出されたお嬢様ですね。

事実をねじ曲げる部分は、あの記者と
変わらないようにも思えますが。」



言ってくれるな。

人間は確かに醜くて卑しいが、悪魔は
人間とは非にならないほど卑しく
醜くいだろうに。