私と彼の一年物語






駅を出発してから1時間。







道に迷った。







「だ、大体この地図が悪いのよ!こんな線を数本引いただけの紙切れじゃ分かんないっつーの!!」






くしゃくしゃに丸め近くのゴミ箱に投げ捨てる。






「あー…遅刻だ」






スマホを取り出すと、ディスプレイに表示された時刻はすでに指定された時間を過ぎている。





それにまだ現場に着いてすらいないのだ。




どのくらい遅れるかはわからない。






途方に暮れベンチでうなだれていると不意に肩を叩かれた。






「?」






特に驚くわけでもなく叩かれた肩の方に目をやるとおじいさんが立っていた。






髪は白髪で少しふっくらとした体型をしている。




5、60歳くらいだろうか?けど顔立ちは整っていて若くも見て取れる。






「常葉高校の生徒さんかな?」






まったりとした声でそう尋ねてくる。






「なんで」





分かったんですかといいかけてやめる。そりゃ常葉の制服を着ているんだからわかるだろう。






「いや常葉高校の制服を着ていたからね」






「そ、そうですよね」






あはは…若干棒読みに聞こえなくもない声を上げる。






あー恥ずかしいなぁもう!!なに分かりきったこと聞こうとしてるのよ!






「それで、何かご用ですか?」






あまりこの話題を長引かせまいと話題を変える。






平日の昼間に公園にいたら怪しいとも思うだろう。






つまり、






はぁ…お説教か…






「あぁ!突然すまないね!私は君がこれから1年間行う【職場体験】先の理事長だよ」






え?





おじいさんが言ったのは私が思っていたものとは全然違うものだった。






「遅いと思って外に出たらこの公園に常葉高校の制服を着た女の子を見つけたもんだから」






なんだ…そういうことか…。びっくりしたぁ…。





それにいつの間にか職場体験先の近くまで来てたんだ。






「あ!遅れて申し訳ありませんでした」






「いやいや、初日なんだし構わないよ。次からはちゃんとしてね?」






「はい…」






「それじゃあ行こうか」