Tears remember.

「来海。お医者さんから話を聞いてきたよ。

記憶喪失、だって。」

「はぁ。」

記憶喪失、って。
信じられるわけないじゃん。
だって、自分のこと覚えてるし?
昨日の事だって…あれ?

あら、私、老化が進んじゃったのかも。

「一旦、俺らと一緒に帰ろう。」

は?
なに、新種の誘拐犯ですか?
いやいやいやいや、知らん人について行ったら駄目って小さい頃に習ったから!私!

この、男の人に腕を掴まれる。

「ちょっ、離してください!」

男の人は酷く驚いたような感じがして。

「ご、ごめん。でも、帰らなきゃ。
おばさん、待ってるよ。」

「離れて。」

「っ…でも、」

「離れて!!!」

「っ……!」

悲しそうな、悔しそうな。そんな感情が顔に出ている。

悪い人じゃないってことは1mmだけ、わかったけど。
信じたわけじゃないから。

男の人は、静かに病室をあとにした。
さみしそうな背中が何故か忘れられなかった。