一瞬、ひなたが大きな目を垂らして、悲しそうな顔をしたのを俺は見逃さなかった。
俺が冷たくしたから?
そんな顔をさせたのは俺のせいなのに、ひなたを悲しませたのに違いないと、後悔をする。
立ってもいられなくなった俺は、離れていくひなたの名前を慌てて呼ぼうとしたとき。
「拓!ナイスだったね!」
ひなたが言った言葉を、ひなたではない女が言った。
「……おー。ミカ。」
「バスケ上達したねー。まぁまだまだ私には敵わないだろうけど」
「お前偉そうに言うなよ」
あはは、と口を空けて笑うミカは女バスの部長。
男女共同で体育館を使う時もあり、男女交流の機会が多い。
だからミカとはよくゲームをやって、二人で点争いをしている。
仲が良すぎて誤解されることもあるが、ミカとはもちろん"バスケ仲間"だ。

