うちの店は新人も先輩後輩もなく開店準備や掃除、閉店後の勉強会も全て皆んなでやる事になっている。
勿論、オーナーだとか関係なく俺も同じだ。
だが、勉強会が無くとも店が終わって帰って来れるのは9時近くになる。
俺は慣れているからいいが未來は俺が帰って来るまで食事をせずに待ってくれている。
流石にお腹すくだろうから先に食べてていいと言っても待っててくれる。
ひとりで食べるより一緒に食べた方が良いからと確かに俺もひとりより未來と食べれる方が嬉しい。
こんな事で幸せを感じるなんて昔の俺だったら考えられないだろうな。
今日は勉強会も無いし早く帰ろう。
「おーい!皆んな早く帰れ鍵閉めるぞ!?」
「拓海さん、これから飲みに行きませんか?」
「悪い、今日はやめとくわ」
「えー行かないんですか? 拓海さん最近変ですよ!? 仕事が終わるとわざわざ髪をクシャクシャにして服も最近はノーブランドだし?格好いい拓海さんはどうしちゃったんですか?蓮さんも彼女と同棲してから付き合い悪いし…」
皆んなは仕事着のまま帰って行く。と、言うより仕事着が決まってる訳ではない。
皆んな自前の服で仕事をしてるから、仕事が終わったからとわざわざ着替える奴は居ない。
俺も以前はそうだった。
だが、珠実に言われて着替えるようになったのだ。
『女はね男のギャップに弱いんだよ?だから格好いい拓海は隠して起きなよ!?』
そう言われて、そんなもんか?と思いながらも仕事が終わると髪をクシャクシャにし、未來が見立ててくれたノンブランドの服に着替えて帰っている。
「まぁ俺も色々あるんだよ!ほら、これで皆んなで飲んで来いよ!」
諭吉を2枚渡すと「あざーす!」と喜んで消えて行きやがった。
調子のいい奴らだ!
さぁー帰ろう。

