見えちゃうけど、好きでいて

「いなくなってしまったの?」
時恵もあたりを見回した。
「あぁ、はい……おかしいな…どうして……」
季衣はそう言って、後ろの席の男を見た。
男は、食事を終えたのか、立ち上がり「ごちそうさま」と言ってお金を置いて、店を出て行った。
その後ろ姿を見ながら、首を傾げる季衣。
「どこかでみたような……」
季衣は、時恵のほうに向きなおり「あの、娘さんどこかに行ってしまったみたいで…
」と申し訳なさそうに言った。
「そのようね。また、姿が見えたら連絡をくれる?」
時恵は、自分の名刺を季衣に渡した。
「わかりました……」
お辞儀をして、店を後にした。