見えちゃうけど、好きでいて

「しっかり頼みますね」
女社長はそう言って、季衣の持っている顧客名簿の上に紙を置いて前を去っていった。
季衣は視線をそれにやり、広げてみた。

『今晩の食事よろしくね』

「あ……」
「なに?どうしたの?」
「な、なんでもないよ」
季衣は今晩どこかの社長と食事をする約束をしていた。
「忘れてた……」
今日の自分の服装を思い出し、後悔した。