見えちゃうけど、好きでいて

とぼとぼと歩いていると、また目の前に青白い顔をした人物が立っていた。

ひぃっと声をあげ、目をつぶり走り始めると、すぐに誰かにぶつかり転びそうになったが、腕をつかまれ何とか転ばずに済んだ。

「おい、お前、ちゃんと目を開けて歩け」
目の前に現れたのは生きた人間。

腕をつかまれたまま指を指された。

「あぁ、生きてる……」

「当たり前だ」ペタペタと男の体を触る季衣。

「あ、あ、いなくなった」

男の体をペタペタ触ったままあたりを見回す。

「あぁ?」

男は季衣の行動に苛立ちながら、触っている手を握った。