~レニの涙~

「お、お願いは聞けませんから、どっか行ってください」

横断歩道で、信号待ちをしている女は、誰もいないところで一人で話をしている。

周りの人たちは、そんな女に不審なまなざしを向けている。

「だから、無理なんです」

おびえながら、手を広げる女の行動を見かねた人が「あの人誰としゃべってるのかしら」とわざと聞こえるように話した。

女はぴたりと動きを止めた。

自分のしている行動がおかしいと、認識したようだ。

あたりを見回し身を縮めながら、その場を後にした。