でも、ママ? 私は人生のキャラメル作りに失敗しちゃったみたい…。
私の心の底のキャラメルは、真っ黒な煙をモウモウと上げて焦げ付いて掬い上げる事も出来ないし、煙があまりにもヒドくて涙が込み上げてくるよ。
「……何だ、まだいたのか…」
扉の開ける音と共に現れたのは、香輝の主治医の新堂先生だった。
「……先生…」
少しだけ震える手にグッと力を入れる。
先生が悪い人じゃないって事は、分かっているのに…。
「…すまないが、しばらくの間、我慢して欲しい」
私の震える手を見ていた先生は、溜め息混じりに香輝に近付いて行く。
白い手首に指を当てて脈を計ったり、カルテに書き写していった。
「……ぁ、先生…?」
「起きたか。気分はどうだ?」
「…………頭、痛いかも…」
その言葉に、ズキンと胸に痛みが走った。
私のせいだ…。

