滝口と別れ、自宅へ向かうネオンの消えた繁華街をよろよろと歩きながら川崎は呟いた。
「あぁ情けねぇー、この歳になって女の一人も口説けねぇなんてなぁ・・・それも本命じゃないんだからな~」

そんな酔いどれた川崎の目に、昨日そこにあったのとは違う
看板の明かりが映った。
その看板には、~口説き文句からプロポーズの言葉まで~各種「言葉」レンタルショップという、意味の解らない文字が点滅していた。
「なんだとぉ~看板まで俺をバカにしてるのか?」
昨日までその店は確か、CD・DVDのレンタルショップだったはずだが・・・
おそるおそる川崎はその店の扉を押して中へ入ってみた。
店内には、特にショーウインドウや陳列棚があるわけではなくがらんとしている。
「いらっしゃい」
待ってましたとばかりに、正面のカウンターの男から声がかかった。
「今ならまだいい言葉がいっぱいありますよ。今夜開店したばかりだからね~」
60歳半ばくらいだろうか、白髪交じりの小太りの店主が愛想のいい笑顔を向けていた。