そしてあたしの前にしゃがんで、まずは膝の手当をしようとする。
「あ、自分でやるよ!こんな所まで連れてきてもらった上に手当まで…申し訳ないよ!」
「いいから、黙ってろ。」
「え…でも、」
瞬くんはあたしの言葉を無視して、手際よく手当をしていく。
もうとにかくとにかくカッコイイよ…
ずっとずっと夢に見ていた王子様がこんなにすぐ近くにいるなんて…
それも、ここはその王子様の家で、いつも瞬くんが座ってるであろうソファにあたしも座っていて。
「痛っ…」
「あ、ごめん。」
消毒液がしみて咄嗟に声が出てしまった。
…なんか、ドキドキする。
シーンとした静かな広いリビングに2人きりで、それもあたしの膝に瞬くんが触れてるなんて。
あたしの膝に触れている瞬くんの手を見れば見るほど、あたしの心臓はうるさくなる。
…落ち着け、落ち着け陽葵!
ふと、目の前にあるテレビの下の棚に目を向けると、家族写真が飾ってあるのが見えた。
その隣には可愛い猫の写真が何枚も何枚も飾られていて、小さい男の子が猫を抱っこしている写真なんかもある。
瞬くん…かなぁ。って、瞬くんだよね!
今と変わらない綺麗な二重に筋の通った鼻に艶のある黒髪だもん…
顔は少し幼くて子供っぽいけど、やっぱり王子様だ。