「……で?逃げないんじゃなかったっけ?」

 玉葱のみじん切りをしながら僕はマコトに話し掛ける。

 『あれは、なんてゆうか……比喩的な表現で……』

 華崎さんが辞めて三日。

 マコトは相変わらず中へ引きこもっていた。

 「どんな比喩だよ!」

 あの日の華崎さんとの別れ際にマコトが言った言葉。

 『もう逃げない』

 あの言葉を聞いた時、僕は自分の役目の終わりを悟った。