もう一人の『僕』が。

 僕の中にはもう一人『僕』がいる。正確には『僕』の中に僕がいる。

 元々の人格は『僕』の方で、僕は代役でしかない。

 ある事をきっかけに『僕』は殻の中へと引きこもり、僕が代役として生活をするようになった。

 『僕』には昔、憧れの先輩がいた。中学二年の時の話しだから、かれこれ十年以上も前の話しだ。

 その時には僕はまだ、たまに『表』に出て代役を果たすだけだった。