「...り、...のり、...みのり」

誰かが自分を呼んでいる?そんな感覚に襲われて、私はうっすらと目を開けた。


「穂っ!!!!」

いつもなら五月蝿く思うであろう母の声が、小さく聞こえた。

目の前に、母親と父親がいる。


母親はボロボロと涙を零し、私を見ていた。

父親は涙を浮かべ、必死で堪えている様子だった。


私が目を覚ましたのを見兼ねると、母親が抱きついてきて、


「穂っ!!!!良かった、起きてくれて...」

私は何のことかわからなくて、でも何故か後ろめたくて、目を逸らした。


「あんた、ここ一ヶ月、ずっと眠ってたのよ?...家にも帰ってこず...。

だからお母さんたち、捜索願を出してね、探してもらったのよ。」

母親はふう、と息をついて、「お陰で返せそうだったローンが先延ばしよ」と唸った。


お母さんの青い瞳が、涙でフルフルと震えていた。