「戻りたい...とは、思えないなあ」

ポソ、と独り言。

きっと、ここから大きな声を出せば、私はすぐに助かるだろう。


でも、何故かここにいたかった。


懐かしかった。


ほんのり匂うゴミの香りとか、線路の石にべチョリと付着した鳩の糞とか。


全てが、全てが愛おしかった。


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お腹がすいた。グウウゥ、とお腹がなった。


私は、さっき女子高生が捨てたオレンジジュースの缶を振って、飲んだ。


ほとんど残っていなかった。


私は、それをしゃぶり始めた。チュパチュパという音が、ホームにひとり響く。


そのハーモニーが、気持ちよくて。

1人で鼻歌を歌っていた。


そして、ぽろりと口から零れたのだ。


「ただいま」