そして土曜日。わたしが休んだ所為でシフトが狂った牧野君は、お休み。出勤してきた野乃ちゃんにもお土産を手渡し、午後の3時過ぎに顔を出した由里子さんにはバックヤードで販売報告の前に、神妙に謝罪した。

「すみませんでした由里子さん。無理を聞いてもらって・・・」

「そんな気にしなくて大丈夫だってば。相澤君には借りも沢山あったし、ちゃあんとお土産もいただいたし。でも織江ちゃん愛されてるのねぇ、良かった良かった」

 他人から言われると顔から火が出そうに恥ずかしくなって、「いえ、あの」としどろもどろに狼狽えてしまう。

「相澤君も何て言うか、雰囲気柔らかくなったもん。静羽が死んでから全然笑わなくなってたし、ほんと織江ちゃんのお陰だわね」

 由里子さんが破顔一笑する。
 最近も渉さんに会ったようなニュアンスだったから、特に意味は無くそれを訊き返した。

「由里子さん、渉さんとよく会うんですか?」 

「仕事の関係でたまにね。・・・って、誤解しないでね織江ちゃんっ、あたしと相澤君、本気で何も無いから! 第一あたしのダーリン、もっとイイ男だしっ」

 わたしが二人の仲を疑ったと勘違いしたらしく、半身を乗り出すようにして真剣な顔で訴える。

「大丈夫です、分かってます。ただ渉さん・・・わたしには仕事の話は出来ないと思うし、由里子さんが相談相手になってくれたらいいのかなって・・・」

 半分以上は本心じゃ無かった。本心じゃないけれど。出来るものならすべて自分が受け止めてあげたい。でも渉さんはそれを望んでいない。せめて。同級生で気心の知れた由里子さんに少しでも吐き出せるなら。そうして欲しい。

 わたしのその答えを聴いた由里子さんは、いつになく厳しい顔付きになって。「それは違うわよ、織江ちゃん」と、叱るように言った。