途中、車は休憩の為にサービスエリアに立ち寄った。
 最近のサービスエリアはお手洗いも綺麗に整備されているし、フードコートには地元グルメの人気店が出店していたり。広さといいショッピングモールのようでびっくりする。限定商品を求めて、その為だけに足を運ぶ人もいるそう。
 
「結城、ゆっくりは見てらんないよ?」

 ついつい見て回ってしまうわたしの後ろから、不愛想な声が掛かる。

「代理を待たせらんないだろ」

 藤君は、建物の入り口で待っている筈の渉さんが気掛かりらしく、溜め息雑じりに急かされた。

「だって、由里子さんがすごく好きそうなスイーツがあるの。買って帰りたいなぁ」

「今買ってどーすんの。帰りにまた寄ってやるから、我慢しな」

「はぁい」

 残念そうなわたしに構わず、ほら行くよ、とさっさと歩きだす藤君。その後を追ってエントランスに向かう。
 バスツアーの観光客もある所為か、混雑というほどでは無いけれどそれなりの人が行き交う。自動ドアの近くには、待ち合わせなのかスマートフォンを片手に佇む姿もあちらこちらに。

 黒いコートの彼の立ち姿は、わたしにはすぐ目を引いた。耳にスマホを当てて電話中のようだった。
 背筋の張った堂々とした姿勢は、それだけで他人を寄せ付けない雰囲気を醸しているようにも思う。知らない他人が見ても、きっとどこかの偉い人。
 渉さんから視線を外さずに彼に向かって歩いてゆく。ガラス越しにわたしと藤君に気が付くと、通話を終わらせる仕草で上着の内ポケットにスマホを仕舞いこんだ。

「待たせちゃいましたか?」

 上目遣いに申し訳なさそうにすると、返事の代わりに頭を撫でられる。

「・・・もっとゆっくり見てても良かったんだぞ」

 藤君に急かされて。なんて意地悪を言うつもりも無いから。

「帰りにまた寄ってくれるって、藤君が。由里子さんが喜んでくれそうなお土産があったんです」

 にっこり笑い返す。
 
「アイツの甘いもの好きは底無しだからな。大概にしておけ」

 渉さんはそう言ってわたしの肩を抱いて歩き出しながら、眼差しを和らげた。