「オレを若頭代理に殺させる気かよ、ふざけんな」

「・・・じゃあせめて、“結城”は駄目ですか?」

「あんたさ、自分の立場わかって言ってんの? ウチの若頭代理っつったら、ここいらのシマで知らないヤツいないんだよ。そのひとの女を呼び捨てとか、無理に決まってんだろが!」

「渉さんは、そんなに小さい器じゃありませんてば」

「あんたにだけデカいんだよっ」

「・・・分かりました。じゃあ今度、渉さんに訊くからいいです」

「ナンでそこで、あんたが拗ねんのっ?」

 金髪をかきむしり、あーもー分かった!、と後ろを振り返り、恨みがましく睨まれた。

「結城、な。・・・っとに、これ以上はナンも譲歩しねーから」

「有りがとう、藤君」

 
 お店に着くまで一言も口を利いてくれなくなったけれど、これはこれで成功かしら。
 ほころんだ笑みはもちろん、わたしの胸の中。