渉さんがここに帰るのは先週の水曜日以来だった。
 わたしもシフト制で休日は4日、あるいは5日おきになる。基本的に土曜日曜祝日は必ず出勤になるからか、渉さんも週末に帰っては来ない。わたしに合わせたように、お休みの前日だったり当日に戻ってくれるのだ。
 今週はちょうど火曜日の明日がお休みになる。
 少しでも長く一緒に居たい。そう思うと嬉しいのに切なくて胸がつん、と痛んだ。

 夜の10時を回って、「30分後に帰る」と渉さんから電話があった。
 藤代さんがキッチンで作業を始める。実は夕食も朝食も料理担当は、彼。・・・厳密に言えば、掃除や何もかもが。

 最初の頃に役割り分担を申し出てみたのだけれど、にべもなく却下されてしまった。ここは彼のテリトリーなのだ。自分の手で守る事が彼にとっては大事な誇り。だからわたしは、自分の身の回りの掃除や洗濯を怠らないよう、・・・彼の聖域を冒さないよう出来ることに努めようと思っている。





「お帰りなさい。・・・お疲れさまでした」

「ああ」

 玄関先で出迎えると、光沢のあるグレイのネクタイを緩めながら渉さんは、いつ見ても端正でずっと見入っていたいその顔をわたしに向け、目を細めた。

「・・・いい子にしてたか」

「はい」

 小さく笑んで返す。
 それから。
 渉さんの腕がわたしを掴まえて。
 頭の天辺、額、耳、首筋、・・・キスを順に落とす。最後に舌と舌で繋がる。
 
 ああ・・・やっと埋まってく。
 どこもかしこも、足りなくて・・・・・・寂しかったから。


 なかなかリビングに入らないわたし達にキッチンから声が掛かって。

「・・・悪いな藤。俺は、好きなものは我慢できない性質(たち)なんでな」



 渉さんはいつも余裕。