渉さんは、ずっと優しい。
 またわたしを腕の中で泣かせて、落ち着くのを待ってから静かに。

「・・・安心しろ。俺はお前を独りにはしない。何があろうが、どこにいようが必ずお前の処に帰って来る。・・・それだけは忘れるな」

 ああ。
 このひとの深い眼差しに、いつも心を掬(すく)われている気がする。
 信じて待てる、と強く思える。


 


 そうして突然に始まった、渉さんのマンションでの二人(?)暮らし。
 彼が帰った後に残りの荷物を解き、普段よりかなり遅い時間にやっと眠りについて。
 セルドォルまで、不機嫌そうな藤代さんに車で送ってもらい、一年の仕事初めを無事に迎えた、・・・という訳だった。

 帰りも当然、彼の迎えを待つことになる。ほんのちょっと。・・・溜め息を吐きたくなる。
 あのひと、本当はものすごく女嫌いなんじゃないでしょうか、渉さん。
 先の長い同居生活に一抹の不安が・・・・・・。