陽当たりが良い、とリビング続きの和室をわたしの部屋に割り当ててくれていた。
 今までキッチン用で使っていた丸テーブルとイスや、ベッド脇のチェストなんかが巧くレイアウトされ、ラグを敷いて和モダンな雰囲気に仕立ててある。

 私物は積まれた段ボール数箱分だけなのを、渉さんは「これだけか」と少し意外そうにした。

「・・・わたし独りなので、何かあった時に処分する人が困りますし。荷物は増やさないようにしてましたから」

 普通に笑って返す。

 洋服は、ベッドルームに備え付けられたウォークインクローゼットに全部収まっていたし、不要になってしまった折り畳み式のベッドや洗濯機、その他もろもろは処分した、と藤代さんから聴いた。

「足りない物や分からない事は藤に訊け。女にはあんまり優しくない奴だが、頼りにはなる」

 云われた藤代さんは苦虫を嚙み潰したような表情を浮かべながらも、悪い気はしてなさそうに見えた。





「・・・織江」

 ベッドの上で服を着たまま抱き合い、長いキスを交わす。 

「俺も、そうしょっちゅうは帰ってやれないが、いい子で我慢してろ」

「・・・大丈夫です。ちゃんと待てますから・・・」

 言っている傍から、寂しさがこみ上げる。
 ・・・離れてたくない。ずっとそばに居て、渉さん・・・! 言えない言葉をぐっと押し殺す。
 彼の胸に顔を埋めて、堪える。渉さんは殊更、わたしを強く抱きしめて。

「聞き分けが良すぎるのは可愛くないぞ、お前」

 だって。
 困らせる、我儘になる、泣いてしまう・・・!

「・・・少しは俺を引き留めろ」 

 頭の上で優しく響く声。
 感情が一気に振り切れそうになって。喉の奥からせり上がって来た塊が制御しきれなくなっていた。
 小さな悲鳴のように想いがほとばしってしまう。

「・・・か、ないで、渉さん・・・っっ。おねがい、一人にしない、で・・・っっ」