その後もずっと、渉さんはベッドから離さず。自分よりもわたしばかりを何度も絶頂に導いて、わたしはどんどん渉さんのものになってゆく。

「お前は俺の女だ・・・織江」

 躰の火照りを鎮めている合間に、幾度か彼はその言葉を口にした。
 確かめるというよりは、わたしに刻印しているようにも感じた。

「わたしは・・・渉さんのものです、ずっと」

 そのたびに心から応えて。



 
 何度目かの合間に渉さんが思い出したように言った。

「そう言えばお前、牧野とは話をしたのか」

 一瞬の間を。彼が見逃す筈もなく。話せ、とわざと威圧的に命令される。

「渉さんの事も話してちゃんと断ったんですけど・・・」

「けど、・・・何だ」

 うぅ、目線が刺さります、渉さん・・・。

「自分が納得するまでは諦めないと云われました・・・」

 隠しても無駄と思い白状した。

「俺がヤクザ者だから不幸になる、とでも言われたか」

「はい、まあ・・・」

「最後にこの俺を睨み付けて行ったぐらいだからな。その度胸は買うが、俺に喧嘩を売る気か?」

 口の端を歪めてシニカルな笑みを滲ませる。
 渉さんが本気で言っていないのは分かってる。牧野君の肩を持ち過ぎないよう、慎重に言葉を選んでわたしは言った。

「邪魔をするとか、わたしに言い寄るとか、それはしないと約束しましたしわたしが幸せだったらいい訳ですし」

 小さく微笑み返す。

「大丈夫です、心配ないですよ。渉さんと居て幸せじゃないなんて事、有り得ません、か、らぁっ・・・?!」

 語尾がひっくり返ってしまったのは。
 上半身だけ起こしていたわたしの腕を掴んで、彼が押し倒したから。塞がれた唇を割って舌が入り込んで来る。うねるように絡みつくように。

「・・・ぅんっ・・・」

 ねっとりとした熱いキスに思わず喘ぎが漏れた。
 鍛えてあって力強い筋肉質の両肘に、顔を挟まれるようにして随分と長い時間、口の中を貪られていたように思う。
 不意に離れた渉さんは、わたしをじっと見下ろして。決心したように静かに口を開いた。

「今日から俺のマンションに来い。お前はそこで暮らせばいい」