例年通りに果歩ちゃんが泣き、由里子さんがはっちゃけた忘年会から数日が経ち、セルドォルも店内がクリスマス一色に。ミニツリーやオーナメントを求めて立ち寄ってくれるお客さんも日増しに増えて来た。

「牧野君、荷受けお願い!」

「織江さぁん、紫宝堂さんからお電話です~」

 シフト制で毎日誰か一人が休みになるから、通常3人でお店を回すことになる。時には接客や取引先との遣り取りでドタバタしてしまって、お昼休憩が3時過ぎなんて事にも。
 そんな疲れも心地良いぐらい、日々は平穏だし満たされている。皆んなとても好い子達ばかりでオーナーも素敵なひとで。

『でも家に帰って独りって寂しくないですかぁ?』

 果歩ちゃんは、彼氏を作れと事あるごとにわたしをせっつく。

 専門学校時代にちょっと付き合った人も居たけれど、長くは続かなかった。
 “織江だって本当はオレのこと好きじゃないんだろ?”
 電話もラインもいつも自分からばかりで、それが不安だったと彼は他のひとを好きになった言い訳を残して去って行った。
 わたしは彼が好きだった、片時も離れていたくなかった位に。ただ。重たいと嫌われたくない一心で電話もラインも我慢した。彼との距離をどう計ったらいいのか・・・分からなかったのだ。

 今は独りの時間を、自分のペースで気ままに過ごすのが一番の贅沢に思えてしまうから。何かを焦るつもりは素直に無かった。
 取り敢えずはこのクリスマスセールを乗り切ること。
 サンドウィッチとおにぎりを手早くお腹に収め、わたしはバックヤードを後にした。