7時前にはお開きにして、『良いお年を!』と交わしながら解散になった。
 牧野君はあれから、アパートまでの帰り道を送り続けてくれて、本当にお世話をかけてしまった。

「牧野君のお陰で怖くなくて済んだし、本当に本当に有りがとう。今度お礼しないとだね」

 切り良く今日でお役ご免にしてあげよう。そんなニュアンスでわたしは言った。

「いいっスよ。ってか、別にこれからもずっと送るんで」

 マウンテンバイクを引いて後ろを歩く彼から即答が返る。

「でもずっとなんて悪いわよ」

「気にしないでいいって言ったっスよね、俺。方向一緒なんだし」

 第一、と珍しく長めに反論された。

「忘れた頃に来る可能性だってあるっスから。・・・織江さん、マジ甘いよ」

「そ・・・うかな」

「そうっス」

 結局、続行が決定。手のかかる姉と面倒見のいい弟・・・のような図式というか。同じ職場の仲間という無意識で、甘えてしまってた気もする。

 間もなくアパートに到着し、普段通りの笑顔でお礼を言う。

「有りがとう牧野君。来年も宜しくね、頼りにしてるから!」

「・・ウっス」

 照れ隠しなのか、いつも素っ気なく省略された返事が返って来る。

「じゃあお休みなさい、気を付けて帰ってね?」

「あ、織江さん」

「ん?」

「正月、・・・初詣とか行かないっスか?」

「気が向いたら近くの神社に行く、かなぁ?」

「俺と行かないっスか」

 そう言われた時。わたしはまだ気が付いていなかった。・・・それほど無防備になってしまっていた。自分が招いている危うさというものに。