海鳴り亭は、由里子さんの店『セルドォル』の並びにある居酒屋さんだ。
 マスターともすっかり顔馴染みで、いつも料理をオマケしてくれる。

「じゃあ今年も一年、後もうちょっとだけ頑張りましょーっ!」

『乾杯ー!』

 スタッフ4人とオーナー、5人の慰労会。・・・何かにつけてはしょっちゅう海鳴り亭にお邪魔してるんだけれど。

「織江さん、オリエさぁんっ」

「はいはい、なぁに?」

 お酒が入ると必ず泣きじょうごになるのが、最年少の果歩(かほ)ちゃん。

「聞ーてくださいよぉっ、ソウタのやつ、また合コン行ったんですよぉっっ」

 大学生の彼氏がサークルの飲み会だと言い張って浮気してる、と半泣きだ。

「でも彼、よく帰りに迎えに来てるでしょ? 果歩ちゃん大事にされてると思うよ?」

「それとこれとは違いますもん~っ」

「友達付き合いとかもあるだろうし、サラリーマンになったって男の人はそういうのあるじゃない」

「じゃあ今度ソウタに訊ーてくださいよぉ、ほんとに浮気してないかって!」 

「うんうん、訊いてあげるから。ほら泣かないの」

「織江さぁぁんっ」

 よしよし、と彼女の頭を撫でてあやすように。
 妹ってこんな感じなのかなって。姉妹体験をしてるみたいで、気持ちが少しほんわかする。