ネギとメンマに海苔、チャーシュー。峰さんの作ってくれるラーメンはシンプルな具と、さっぱりとした旨味のあるお醤油味で。スープも残さずに美味しく頂く。
 半袖のカットソーを着ているのに、温まった躰がじんわりと汗ばむ。さすがの渉さんも途中から上着を脱いで、ネクタイも緩めていた。

「・・・嬢ちゃんは、ところで幾つになる」

 どんぶりを下げながら、峰さんがわたしに尋ねた。

「来月で25になります」

「なんだ? 相澤とは十(とお)くれぇ違うのか」

 どことなく呆れた顔が渉さんに向けられる。

「ずい分と思い切って手ェ出したもんだなぁ・・・オイ」

 途端に渉さんが低くむせた。

「・・・勘弁してくださいよ峰さん」 

「まあ・・・お前には合ってんだろうよ。守るもんが大きけりゃ大きいほど、頭も冷えて歯止めもかかる。・・・そうすりゃあ長生きも出来るってもんだ、互いにな」

 淡々と言い聞かされる言葉を肴に、渉さんは静かに呑んでいる。
 学校の先生に諭される教え子のような雰囲気にも似ていて、わたしはふと訊いてみた。

「・・・あの、峰さんは組の方ではないんですか・・・?」

「そう見えたか」

 やれやれと云った表情で峰さんは白髪頭を掻く。渉さんを見ると、可笑しさを堪えているかの様子で。かなりの見当違いだったらしく慌てて謝罪した。

「すみません・・・! 渉さんと親しくしてらっしゃるので、てっきりそうなのかと思って、ごめんなさい・・・っ」
  
「いやまあ全くの無関係ってことでもねぇがなぁ」

「織江、峰さんは元警察の人間だ」

「・・・?!」

 唖然として目を瞬かせるわたしに。不敵そうな笑みが二つ、こちらに向いていた。