「・・・お前に頼みがある」

 マンションに帰り、さっぱりとしてから先にベッドに入っていた渉さんが、お風呂上がりのわたしを組み敷きながら不意に言った。
 頼むという物言いは本当に初めてで、不安と期待がごちゃ混ぜになる。

「今度の木曜だ。悪いが・・・俺に付き合ってもらうぞ」

「木曜日ですか?」

「ああ。6日だな」

 6日。何かに思い当たった。・・・・・・静羽さんの月命日だ。 

「大丈夫です。・・・行きます一緒に」

 わたしはただ微笑んで見せた。渉さんは目を細め、そんなわたしをじっと見つめた。
 しばらくそうしてから、ふっと眼差しを和らげ妖しく笑む。

「・・・藤が織江の何に見えてるのか、あの娘にもっと良く訊いておくんだったな。牧野といい、お前は俺を妬かせるのが得意なんだろう?」

「わたし、は・・・わたる、さん・・・だ、け」




 懇願するように、何度も赦しを乞い。 
 渉さんの気が済むまで与えられ、求められる。


 どこまでもそうして。貴方と居たい。永遠に、貴方だけのもので。