以前と同じように店まで迎えに来てくれる藤君に、車の中で飲み会の予定を報告した。

「・・・ホント好きだよな、そーいうの」

 半ば呆れたように云う彼。

「んー由里子さんが好きみたい。そういう賑やかなの」

 最近は助手席に乗せてもらえているから、会話も隣り合わせだ。

「あーまあな・・・」

 何故か嫌そうな顔で。

「そう言えば由里子さん、藤君のこと下の名前で呼んでたでしょう。前から知ってた?」

「・・・・・・・・・」

 返事が無い。訊かれたくない事だったのかしら。あっさり諦める。・・・と。

「・・・オレは愛人なんだよ」

 衝撃の告白が突然やって来て、飛び出そうになるくらい目を丸くする。

「え・・・はい?!」

 愛人。愛人て、由里子さんの・・・っ???!

「ざけんなバーカ。中根由里子の兄貴に決まってんだろ」

「由里子さんのお兄さんて、二の組の次期組長さん・・・? 藤君は三の組でしょう?」

「・・・色々あんだよ。代理も承知してるし」

「恋人・・・とかじゃなくて愛人なの・・・?」

 遠慮がちに訊いてみた。

「向こうは両刀(バイ)だから女と結婚してるし、子供もいるっつの」

 藤君はウインカーを出し、車は交差点を左折する。

「そんなんで中根由里子とも面識はある。・・・これ以上は教えてやらねーから訊くな」

「・・・うん。有りがとう、ちょっとでも教えてくれて」

 秘密主義の藤君がこうして話をしてくれるだけでも嬉しい。素直に思っていた。