由里子さんの予言どおり、連日夜通しになってしまった余韻で。セルドォルに復帰したのは一日置いてからだった。

「織江さぁぁんっっっ」

 もういきなり、来なくなっちゃうから心配したんですよぉぉっっ、と果歩ちゃんに泣き付かれ。

「お帰りなさい、です。織江さん・・・!」

 普段はあんまり感情を露わにしない野乃ちゃんまで、目を赤くして泣き笑いを見せてくれた時には、わたしの涙腺も崩壊して本当に涙の再会になってしまった。

「今日からまた宜しくね・・・っ」




 懐かしい。なんて、二か月居なかっただけで大袈裟かも知れない。変わっていないもの、変わったもの。止まっていた時間の流れがゆるりと動き出す。
 午後になって由里子さんが顔を出し、高津さんが事情があって辞めたと報告されると。果歩ちゃんのテンションが氷点下まで下がり、立ち直らせるのが一苦労だった。

 あっという間に3時休憩の時間になり、果歩ちゃんと野乃ちゃんを先に。わたしはレジで一人、シフト表の調整をしながら店頭に残っていた。数分も経たないでバックヤードに繋がるドアがガチャリと開いたから、果歩ちゃん早いなと思いながらふと目を上げた。

「・・・・・・牧野君」

 クセのある髪は少し伸びていてどことなく、ひょろっとした体型がガッシリしているようにも見えた。半袖Tシャツから覗く腕の筋肉とか、履いているジーンズのシルエットが違っていたりだとか。
 牧野君は何も云わずに一直線にレジに向かって来ると、躊躇せずにわたしを抱き締め、すぐに離れた。

「・・・今度したら本当に本気で怒るからね」

 眉を寄せ怖い顔で睨み上げても、当の本人は悪びれもない表情をしている。

「心配させたのはそっちだよ。織江さん」

「それは・・・そうでも! 他人(ひと)のものに勝手に触ったら駄目でしょ」

「・・・あのひとと何かあったから、来なくなったんスよね? ついでに高津さんも関係あったんでしょ。タイミング良すぎじゃん」
 
 さすがに牧野君は誤魔化せそうにない。わたしは溜め息雑じりに答えた。

「果歩ちゃん達には云わないでね。・・・確かに高津さんはわたし達の知り合いで、わたしが来られなかったことに関係してた。でももう終わったの。それだけよ。変な詮索はしないでね、牧野君」