「晶に、織江ちゃんのこと突き止められちゃってね。相澤君から奪うつもりで近付く気なのは分かってたけど・・・あたしの一存でセルドォルの手伝いに来させたの。相澤君に何も相談しなかったのは、ほんとに悪かったわ。ごめんなさい」

 由里子さんは弱弱しく笑った。

「・・・見てみたかったのよ。きっと織江ちゃんは何があっても絶対に、相澤君を裏切ったりしないから。相澤君を信じる織江ちゃんに・・・あの子が何を思うのかって。少しでも心に響くものがあるんじゃないかって・・・思ったの」

「・・・らしくもないお節介だったな」

「・・・・・・かもねぇ」

 渉さんの呟きに自嘲の笑みを浮かべた由里子さんは、肩を落として暫く何も云わなかった。 

 高津さんにはどうしても届かないだろうか。こんなにも心を痛め、自分を心配してくれる誰かが居ること。わたしも。その一人だということを。 

「織江ちゃん」

 居ずまいを正し、由里子さんがあらたまってわたしを真っ直ぐに見つめる。

「いつか晶にも解る時が来るって、あたしは思ってる。・・・だからそれまで相澤君のこと宜しくね」

 守ってあげてね。
 そんな風に聴こえた気がした。
 
 わたしが渉さんを守る。力でなく愛で。・・・信じ抜く、強い想いで。それが唯一わたしの手にする“刃”。

「・・・はい。由里子さん」

 胸の中で。鈍い銀光を放つ。それを振り抜いてかざす。
 しっかりと微笑み返しながら。