「・・・当然だろう。お前は俺の女だ」

 視線を外して素っ気なく。言い終わらない内に、わたしは肩を抱き寄せられていた。
 ・・・どうやら藤君への妬きもちは、収めてもらえたよう。車窓の外に向けられた振りの、横顔を見上げる。

 貴方が言葉で支配して、わたしを繋ごうとするのを。ただの征服欲なのかと・・・気持ちが折れそうになったりもした。
 俺のものだ。そう云われるたびに、玩具(モノ)でしか無いのかと悲しくて苦しかった。あの時は気付けなかった、立場のある貴方が三日間もわたしの傍を離れなかったのだから、その意味を考えるべきだったのに。

 何があっても離さない。・・・離れるな。
 ひたすらにそんな想いで、貴方はわたしを抱いていた。・・・そんな気がする。


 高津さんとの間にある何かは。思っているよりもずっと、根深いものなのかも知れない。
 決してその領域へは、わたしを踏み込ませないよう激しい拒絶をしながら。貴方は逃さないように、わたしに何重にも鎖を巻き付けた。わたしの服従をむしり取るように何度も何度も、自分のものだと云わせた。

 ・・・・・・でなければ不安、だった・・・?
 
 いつもの厳粛そうな横顔。見つめると、貴方はすぐに視線で振り向く。目を細めてわたしを見やる癖。どうしようなく好き。

 貴方がわたしを失うことを怖がってくれたのなら。

 自分で千切って、飛び立つ為の羽根を捨てますから。
 
 愛おしい貴方の胸元に顔を寄せる。

「はい・・・。何があっても、わたしは渉さんだけのものですから・・・」